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2020.10.26

【we can do it】強度を発揮、PUR(ピー・ユー・アール)糊

カタログや書籍は最後に綴じられて完成します

カタログや書籍をつくる場合は最後に「製本」されて完成します。
一般的なカタログ・リーフレットは背中側が針金で綴じられていますが、これを「中綴じ製本」といいます。
また少し厚めのカタログや書籍などの背表紙があり表紙が本文に糊で貼り付けてある形態を「糊綴じ製本」といいます。この糊綴じは、表紙が硬いもの(ハードカバー)を上製本、柔らかいもの(ソフトカバー)を並製本といいます。
当社の小台工場には、中綴じ製本と並製本ができる製本設備を備えていますが、今回は並製本の糊についてのお話です。

熱い糊で綴じる「ホットメルト」方式

これまで製本で使用する接着剤はデンプン糊や水性糊でしたが、現在はより乾燥がはやいホットメルト糊が使用されています。熱可塑性ポリマーのEVA(エチレン酢酸ビニール共重合体)樹脂が主成分で、名前のとおり約180℃くらいで糊を溶かし、熱い状態で本の背の部分に塗布、そこに表紙を貼り付けて製本します。ホットメルトは熱を加えると柔らかくなりますが、製本機のコンベアラインで搬送されるうちに熱が冷めると硬く固まります。
手軽で使いやすい糊ですが、難点もあります。
一つは強度に限界があることで、厚手の本になるほど全頁均一に強度を保つことが難しく、頁抜け(本が壊れる)が起こること。
二つ目は熱で柔らかくし、冷めることで固まる方式なので、例えば真夏の自動車内で直射日光に当たった道路地図等が、高温で糊が柔らかく戻ってしまい壊れやすくなること。
三つ目は製本作業時に糊釜で樹脂糊を溶かしますが、その際にガスが発生し作業環境に影響があることなどです。

広い適応性をもつPUR糊

PUR糊とは「Poly Urethane Reactive=反応性ポリウレタン接着剤」の略称で、自動車等の工業製品では使われていますが、製本では実用的に使いにくかったのですが、近年の材料、機械の改良により、通常使用しているEVA系ホットメルトに比べると強度や開きやすい柔軟性、環境適正に優れおり、書籍の出版物を中心に徐々に普及しつつあります。

PUR製本のメリット

環境対応面
①リサイクル適正に優れている:古紙再生の場合、固形の糊が細かく破砕されず100%除去が可能です(ホットメルトでは約70%しか除去できず、再生面でデメリットになっている)
②省エネルギー:糊溶解の温度がホットメルトに比べ70℃ほど下げられるので、省エネルギー性に優れています

品質向上面
①強固な接着性がある:接着した直後はホットメルトと同等ですが、反応後はより強固に接着します
②広開性がある:糊素材に柔軟性があり薄く塗布することが可能なため、見開き性がホットメルトよりも良好で開きが良くなります
③耐熱、耐寒性が良い:接着後に皮膜が強靭化するので、使用(保管)環境の幅が広がり、真夏の社内や倉庫などの環境下でのトラブルが防止できます
④耐印刷インキ適正:接着後は耐溶剤性に優れ良好。ホットメルトはインキがある面では接着不良を起こしやすいのですが、PUR糊は絵柄の有無や用紙を選ばず強い接着力があります

生産性の面
①塗布量の低減:糊の塗布厚みを薄くできる(約0.4mm、ホットメルトは約0.8~1.0mm)ため、開きが柔らかくかつ丈夫な製本となります

PUR製本に向いている製品は?

①広開性を活かして:料理本、取扱説明書、パソコン関連書籍、教科書、参考書、地図、旅行ガイド、楽譜
②堅牢強固、丈夫な本ができる:繰り返し使用するテキストや地図、図書館等に保管される書籍、辞典
③耐印刷インキ適正では:アート・コート紙を使う美術画集、写真集
④耐熱耐寒性では:地図、旅行ガイド、アウドドア書籍、輸出関連書籍
⑤リサイクル適正の優位性がある:官公庁出版書籍、環境報告書・CSR報告書等

小台工場の製本機は通常はホットメルト糊での綴じ作業を行っていますが、PUR糊綴じの場合はユニットを切り替えてセットします(下記写真)

PUR装置の本体です
PUR装置からホースで糊を供給します
ホットメルト糊と切り替えPUR糊を補給