ぬかぴーのツブヤキ
発信者:ナナわんこ
2024.04.19
╞╪╡ 鐵 學 ╞╪╡ (15) 夜の情景
「鐵學(てつがく)」と称して、永遠に交わることのない2本のレールにまつわるお話をツブヤいています。
今回は半世紀前の、夜の鉄道風景をご紹介します。
思い出す、ふるえていた寒い夜
ここは三重県の亀山駅に隣接する国鉄亀山機関区です。季節は3月ですが、当夜は鈴鹿おろしの寒い風が吹きつけ、20時ごろと思いますが人もいない寂しく寒い晩でした。
鉄道写真は相手が動いているだけに昼間撮影するもので、まして半世紀前の低感度のフィルムや古いカメラ、そして中学生の腕前では夜間撮影は難しいのですが、待ち時間がだいぶあったので、三脚を立て、バルブ(開放)で数枚撮影したものです。
いま見ると、拙いながらスローシャッターで流される煙や蒸気、照明塔の光芒が懐かしい情感を呼び起こします。
ここ、亀山は伊勢亀山藩の城下町として、また西に東海道の鈴鹿峠(鈴鹿の関所)を控えた宿場町として栄え、明治以降も鉄道で名古屋方面から奈良・関西へ、また伊勢方面へ行く分岐点として人や貨物が行き交い、機関区や操車場がある鉄道の街としても栄えました。
しかしこの写真の頃には伊勢方面へは、近鉄名古屋線や後の伊勢鉄道(旧国鉄伊勢線)の亀山を通らない短絡ルートが主流となったため、やってくる旅客列車は少なくなっていました。
この時の旅は、東京からやってきて亀山をスタートして紀伊半島一周の5日間の撮影旅行で、駅の待合室で寝たりユースホステルに泊まったりという中学生最後の冒険旅行でした。
半世紀後にふたたび亀山駅を訪れましたが、写真の駅舎は建て替えられ、駅前もロータリーになっていましたが、それ以外の機関区や大きな操車場は跡地だけが残っていました。